○筑紫野太宰府消防組合消防本部火災調査規程
平成9年4月1日
訓令第1号
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この規程は、消防法(昭和23年法律第186号)第7章の規定に基づく火災の調査(以下「調査」という。)について必要な事項を定めるものとする。
(調査の目的)
第2条 本調査は、火災の原因及び火災により受けた損害を明らかにして、火災予防対策及び警防対策に必要な基礎資料を得ることを目的とする。
(用語の意義)
第3条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 「火災」とは、人の意図に反して発生し若しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であつて、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。
(2) 「建物火災」とは、建物又はその収容物が焼損した火災をいう。
(3) 「林野火災」とは、森林、原野又は牧野が焼損した火災をいう。
(4) 「車両火災」とは、自動車車両、鉄道車両及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災をいう。
(5) 「船舶火災」とは、船舶又はその積載物が焼損した火災をいう。
(6) 「航空機火災」とは、航空機又はその積載物が焼損した火災をいう。
(7) 「その他の火災」とは、(2)から(6)までに掲げる火災以外の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積場、軌道敷、電柱類等の火災)をいう。
(8) 「爆発現象」とは、化学変的変化による爆発の一つの形態であり、急速に進行する化学反応によつて多量のガスと熱とを発生し、爆鳴・火炎及び破壊作用を伴う現象をいう。
(9) 「発火源」とは、出火に直接関係し、又はそれ自体から出火したものをいう。
(10) 「経過」とは、出火に関係した現象、状態又は行為をいう。
(11) 「着火物」とは、発火源によつて最初に着火したものをいう。
(12) 焼損程度
ア 「全焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の70パーセント以上のもの又はこれ未満であつても残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。
イ 「半焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20パーセント以上のもので全焼に該当しないものをいう。
ウ 「部分焼」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20パーセント未満のものでぼやに該当しないものをいう。
エ 「ぼや」とは、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10パーセント未満であり、焼損床面積が1平方メートル未満のもの、建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10パーセント未満であり焼損表面積が1平方メートル未満のもの、又は収容物のみ焼損したものをいう。
(13) り災程度
ア 「全損」とは、建物(収容物を含む。)の火災損害額がり災前の建物の評価額の70パーセント以上のものをいう。
イ 「半損」とは、建物(収容物を含む。)の火災損害額がり災前の建物の評価額の20パーセント以上で全損に該当しないものをいう。
ウ 「小損」とは、建物(収容物を含む。)の火災損害額がり災前の建物の評価額の20パーセント未満のものをいう。
(14) 死者及び負傷者
ア 「死者」「負傷者」とは、火災現場において火災に直接起因して、死亡した者(病死者を除く。)又は負傷した者をいい、消防吏員及び消防団員については、火災を覚知した時より現場を引き揚げる時までの間に死亡又は負傷した者をいう。
イ 火災により負傷した後48時間以内に死亡したものは、火災による死者とする。
ウ 「30日死者」とは、負傷者のうち火災に起因する原因により48時間を経過して30日以内に死亡した者をいう。
(15) 火災損害
ア 「火災損害」とは、火災によつて受けた直接的な損害をいい、消火のために要した経費、焼跡整理費、り災のための休業による間接的な損害を除く。
イ 「焼き損害」とは、火災によつて焼けた物及び熱によつて破損した物等の損害をいう。
ウ 「消火損害」とは、消火活動によつて受けた水損、破損、汚損等の損害をいう。
エ 「爆発損害」とは、爆発現象の破壊作用により受けた「焼き損害」「消火損害」以外の損害をいう。
(16) 負傷程度
ア 「重症」とは、傷病の程度が3週間の入院加療を必要とするもの以上のものをいう。
イ 「中等症」とは、傷病の程度が重症又は軽症以外のものをいう。
ウ 「軽症」とは、傷病の程度が入院加療を必要としないものをいう。
(火災の種別)
第4条 火災の種別は、火災報告取扱要領(昭和43年消防総第393号消防庁長官通知。以下「火災取扱要領」という。)第1総則6火災の種別に規定する種別によるものとする。火災の種別が2以上複合するときは、焼き損害額の大なるものの種別による。ただし、その態様により焼き損害額の大なるものの種別によることが社会通念上適当でないと認められるときはこの限りでない。
(調査の区分)
第5条 調査は、火災原因調査及び火災損害額調査に区分する。
2 火災原因調査は、次の各号に掲げる事項を究明するために行うものとする。
(1) 出火前の状況
(2) 出火原因(出火箇所、発火源、経過及び着火物)
(3) 延焼拡大の状況
(4) 初期消火等の状況
(5) 避難の状況
(6) 消防用設備等の状況
(7) 死傷者の状況
(8) その他必要な事項(消防行政対策上必要な事項)
3 火災損害額調査は、次の各号に掲げる事項を明らかにするために行うものとする。
(1) 焼き損害
(2) 消火損害
(3) 爆発損害
(4) 火災による死傷者
(民事不介入の原則)
第6条 調査は、原因究明又は損害調査のために必要な事項に限るものであり、個人の民事的紛争にみだりに関与してはならない。
第2章 調査の体制
第1節 調査の体制
(調査の責任)
第7条 消防署長(以下「署長」という。)は、管轄区域内の火災調査の責任を有する。
2 通行中の車両の火災については火災防御した場所を管轄する署長が、航空機の火災については、墜落場所、火災発生場所を管轄する署長とする。
(体制の確立)
第8条 署長は、調査を担当する職員(以下「調査員」という。)をあらかじめ指名し、その調査能力の向上に努めさせるとともに調査資器材を管理し、調査体制の確立を図らなければならない。
2 署長は、必要があると認められるときは、調査員以外の職員を調査に従事させることができる。
3 署長は、管轄区域内に火災を覚知したときは、直ちに調査に着手しなければならない。
(調査員の指名)
第9条 署長は、調査に従事する職員の中から「調査責任者」を指名するものとする。
2 前項の調査責任者は、消防司令補以上の階級にある者をもって充てるものとする。ただし、火災規模その他の事情を考慮して消防士長の階級にある調査員をもつて充てることができる。
(調査責任者の職務)
第10条 調査責任者は、具体的な調査計画を立て、任務分担を明確に指示し、現場調査、質問、書類作成等を適切かつ円滑に行わなければならない。
(応援要請)
第11条 署長は、調査のため必要がある場合は、所轄外署長及び警防課長に対し調査員の応援並びに調査資器材を要請することができる。
2 所轄外署長は、前項の要請を受けたときは、相互に協力しなければならない。
3 警防課長は、前項の要請を受けたとき、又はその必要があると認めるときは、消防本部職員を派遣しなければならない。
第2節 調査員の心構え
(調査員の心得)
第12条 調査員は、火災現象、関係法令等調査に必要な知識の習得及び調査技術の向上に努めるとともに、次の事項を遵守しなければならない。
(1) 調査員は、調査員相互の連絡を図り、調査業務の進行が円滑になるよう努めること。
(2) 調査員は、調査に際し関係者の民事的紛争に関与しないよう努めるとともに、個人の自由・権利を不当に侵害したり、調査上知り得た秘密をみだりにもらしてはならない。
(3) 調査員は、関係のある場所へ立ち入るときは、原則として関係者の立ち会いを得ること。
(関係機関との協力)
第13条 調査員は、警察機関、その他の関係機関と密接な連絡をとり相互に協力して調査にあたらなければならない。
(1) 調査員は、捜査機関等から証言等を求められた場合は、消防長又は署長に事前に報告しなければならない。
(2) 前項の規定により証言等を終了したときは、その結果を消防長又は署長に報告しなければならない。
第3章 原因調査
第1節 原因調査の原則
(原因調査の原則)
第14条 原因調査は、事前確認を主眼とし先入観念にとらわれることなく、科学的な方法による確認と合理的な判断の上に立ち、事実の立証に努めなければならない。
第2節 現場調査
(出火出場の見分)
第15条 消防活動に従事する職員(以下「消防隊員」という。)が、火災現場に出動したときは、出場途上の煙の状況、現場到着時の燃焼状況その推移及び戸締まり状況並びに関係者の言動等火災原因究明に必要と思われる事項等を必要に応じて調査責任者に報告するものとする。
(現場保存)
第16条 消防隊員は、出火箇所と認められる場所及びその付近の消火活動にあたつては、出火前の状況が推測できるよう留意し、原状の保全に努めなければならない。
2 消防隊員は、消火活動のため、やむを得ず出火箇所と認められる場所及びその付近の物件を移動又は破壊しようとするときは、必要最小限にとどめ、原状が復元できるよう必要な措置をとるように努めなければならない。
(現場保存区域の設定)
第17条 消防隊員は、現場保存のため必要があると認められる場合、現場保存区域を設定するものとする。
2 消防隊員は、現場保存について必要があると認める場合、警察官等と協議の上必要最小限に区域を指定して保存に努めなければならない。
(焼死者等の取扱)
第18条 消防隊員は、火災現場において焼死者その他の死者を発見した場合は、速やかに署長に報告するとともに警察署長等にその旨を通報し、現場保存に努めなければならない。
(実況見分)
第19条 調査員は、火災現場その他関係ある場所に立ち入つて焼き状況を詳細に見分し、そのてん末を記録するとともに原因の究明に必要な資料を収集しなければならない。この場合、原則として関係者の立ち会いのもとに行う。
2 調査員は、実況見分、関係者に対する質問等による事実等に基づき現場の復元を行うよう努めなければならない。
(写真撮影)
第20条 調査員は、現場において原因究明上必要なものについては、その内容を明確にするため、写真撮影を行うものとする。
(質問)
第21条 調査員は、関係のある者に調査上必要な事項に関して質問する場合は、常に任意に真実の供述を得るように努めなければならない。
2 現場における質問にあたつては、被質問者の冷静かつ正確な供述を得るためその場の事情を勘案し、時間、場所等に留意して原因究明の端緒を得るように努めなければならない。
3 調査員は、供述を被質問者に暗示するなどの誘導をしてはならない。
4 前項による質問調書に記録した内容を当該関係者に読み聞かせるなどし、記載事項に誤りがないことを確認し、任意に署名押印を求めるものとする。
第3節 照会及び資料提出
(資料の提出)
第22条 署長は、調査のため必要と認める資料については、関係のある者に対し任意の提出を求めることができる。
2 特に必要である場合は、関係者に対し、資料の提出を命じることができる。この場合、資料の提出を依頼した資料のうち、提出者が所有権を放棄しないものについては、鑑識、鑑定処分承諾書により提出者の承諾を得ておかなければならない。
3 署長は、資料の提出があつた場合提出者に対し、資料保管書を交付しなければならない。また、資料を保管する場合は、保管票を付し、保管台帳に記録し、調査が完了するまで保管しなければならない。
4 資料提出者が、資料の返還を求めるときは、資料保管書と引き換えに返還しなければならない。
第4節 原因の判定
(火災原因の判定)
第23条 火災原因の判定は、火災の実況見分、質問、その他の関係資料等を総合的に検討し、判定するものとし、物的調査、人的調査による資料により裏付けるものとする。
(鑑定)
第24条 署長は、火災原因調査に必要がある時は、公的機関に資料の鑑定を依頼することができる。
第4章 損害調査
第1節 損害状況の調査
(損害調査)
第25条 火災の損害調査(以下「損害調査」という。)は、り災物件を詳細に調査し、火災及び消火のために受けた全ての損害についての把握に努めなければならない。
2 損害額の算定基準はり災状況を総合的に検討し、火災取扱要領に基づき算出しなければならない。
(り災届出)
第26条 署長は、損害調査の資料として、り災者から別に定める要領により、火災の鎮火後速やかにり災届の提出を求めるものとする。
第5章 火災報告及び書類作成
第1節 火災報告
(火災速報)
第27条 署長は、火災の状況についてその概況を速やかに消防長及び関係市長に速報しなければならない。
(調査結果報告)
第28条 署長は、調査の結果について、おおむね90日以内に消防長に報告しなければならない。
(火災即報)
第29条 署長は、管轄区域内で、次の各号に定める外、火災取扱要領に基づく火災が発生したときは、速やかに消防長に報告しなければならない。
(1) 死傷者が多数発生した火災(死者3人以上又は負傷者10人以上)
(2) 大規模に延焼した火災(建物焼損延べ面積3,000平方メートル以上)
(3) 損害額1億円以上と推定される火災
(4) 消防活動が極めて困難であつた火災
(5) 消防行政に大きな影響をおよぼすと思われる火災
(6) 特異な出火原因により発生した火災
(7) 危険物製造所等及びガス関係施設の大規模な火災
第2節 書類作成
(調査書類)
第30条 調査書類の作成にあたつては、わかり易い文章で事実をありのままに表現し、誇張及び過大表現等の記述を避けなければならない。
2 調査書類には、原則として作成年月日、作成者の所属、階級及び氏名を記載し押印するものとする。
第3節 少年に係る火災等の調査
(少年に係る火災等の調査)
第31条 少年の関係する火災等の調査については、法令により別に定められる場合のほか、この章の規定に基づき行うものとする。
2 この規定にいう少年とは、少年法(昭和23年法律第10号)第2条第1項に規定する20歳未満の者をいう。
(立ち会い)
第32条 少年を実況見分等における立会人としてはならない。この場合立会人は原則として親権者とする。ただし、このため真実の供述が得られないと認める場合は、親権者以外の親族、教師又は雇主等を立ち会わせるものとする。
(署名押印)
第33条 調査書類には、少年の署名押印を求めてはならない。ただし、少年の質問調書を作成したときは、その立会人に録取内容を閲覧又は、読み聞かせ誤りのないことを確認させたのち、任意に署名押印を求めるものとする。
(氏名の非公表)
第34条 報道機関等に対して、少年の氏名を公表あるいは察知させるような方法を用いてはならない。
(適用除外)
第35条 署長は、
第31条から前条までの規定に係わらず調査のため特に必要があると認められる場合は、この限りではない。ただし、このような場合でも原則として親権者の同意を得るものとする。
(準用規定)
第36条 心身そう失、神経耗弱の常習にある者若しくはろうあ者又はこれらの者に類する者が関係する火災等の調査については、本節の規定を準用する。
第6章 り災の証明
(り災の証明)
第37条 署長は、り災者からり災に関する証明の交付申請があつたときは、り災の証明をすることができる。
(り災証明等事務)
(平18訓令5・一部改正)
第7章 雑則
(火災原因等に関する回答)
第39条 署長は、火災原因その他調査事項について、司法機関等から照会があつたときは、その目的、内容等について検討し照会内容に沿つて回答できるものとする。
3 署長は、第1項の回答をするときは、消防長に報告しなければならない。
(平18訓令5・一部改正)
(その他)
第40条 この規程の施行についての必要な事項は、別に定める。
附 則
(施行期日)
1 この訓令は、平成9年4月1日から施行する。
(旧規程の廃止)
2 筑紫野太宰府消防組合消防本部火災調査規程(昭和60年5月1日訓令第4号)は、廃止する。
附 則(平成18年7月21日訓令第5号)抄
(施行期日)
1 この訓令は、平成18年8月1日から施行する。